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第39回日米財界人会議共同声明 (仮訳)

2002年10月22日、東京・帝国ホテル

日米経済協議会と米日経済協議会(以下、両協議会)は、米国と日本が経済大国として、不安定な世界経済の中で引き続き重大な責務を担っているとの認識を新たにした。

米国経済
米国経済の年初からの緩やかな景気回復過程は、その後も住宅投資や個人消費に牽引され継続している。しかしながら、企業業績の不振、弱含みが続く事業投資、予想される対イラク軍事行動の影響などによって、景気減速の可能性が懸念されている。
米国政府と民間企業による投資家の信頼を回復するための諸施策にもかかわらず、米国の資本市場において継続する不安定さが実体経済に影響を及ぼしかねないとの懸念もある。市場の信頼を回復するため、米国企業は自ら企業会計およびコーポレート・ガバナンスを改善するための方策を継続的に講じていくべきである。
両協議会は、米国政府に対し、経済回復を確実にするために必要な財政政策および金融政策における柔軟性を発揮することを要請する。
日本経済
日本経済は今年前半に底打ちしたが、その回復は、輸出主導によるものであり、長引く内需(個人消費、企業設備投資)不振のため持続しないとの懸念がある。消費者および企業の景気への信頼感が低く、デフレ圧力もまた依然として続いている。
両協議会は、小泉首相が現在、不良債権問題の最終的な解決を最優先課題の一つと位置づけていることを力強く感じている。日本政府は、大規模な不良債権処理を実行する諸施策を迅速かつ総合的に講じるべきであり、不稼動資産が実体経済の中で生産的に活用されるように努めなければならない。日本政府はそれらの不良資産の処理と解決を円滑に進めるためのインセンティブとなる税制措置を講じるとともに、良好に機能するクレジット、証券化市場の成長を促進すべきである。
また、公的資金の投入は、売却、ローン・ワークアウト、あるいは法的整理を通じた不良債権処理と関連するものでなければならない。この意味において、より効果的で積極的なRCCの活用は決定的な重要性を有する。同時に、両協議会は不良債権問題の解決は広範囲な構造改革なくしては実現できないと強く感じている。構造改革を実現するための具体的で実行可能な施策が日本経済の回復を促すことになるであろう。
問題の大きさと困難さに鑑みれば、以下のような施策を同時に実行することが必要である。
・雇用移動の円滑化や新規雇用創出に向けた一層の規制改革
・影響を受ける個人の円滑な転職を支援するための教育や失業保険等の分野における社会的セイフティー・ネットの拡充
・財政政策および金融政策への調和的で柔軟なアプローチ
・存続可能な中小企業が資金不足に陥ることを防ぐための責任ある支援策の拡充
日米官民合同会議
両協議会は、日米両国政府が日米官民合同会議を創設したことを歓迎し、この会議の将来に向けての努力を支援する。両協議会はこの会議の主旨を支持し、日米両国政府が両国の経済・財政政策を進める上でこの会議の提案を考慮するよう求める。
コーポレート・ガバナンス
両協議会は、幾つかの企業の不正、不祥事によって株主やその他ステイクホルダーが日米両国におけるコーポレート・ガバナンスへの信頼を失っていることに留意しており、この信頼を回復するため、日米の企業はコーポレート・ガバナンスを改善するための努力を行うべきであると認識している。
日米の企業は各々自身のガバナンスと経営手法をそれぞれ有するが、良好なコーポレート・ガバナンスに共通する基本原則および透明性、財務のディスクロージャー、アカンタビリティーという基本プラクティスがある。したがって両協議会は、両国の経済界が互いに学び合い、ベスト・プラクティスを追求するために努力していることを歓迎する。
外国直接投資
米国の経験が示すように外国直接投資(FDI)は雇用、税収、技術移転、経営ノウハウの重要な源である。両協議会はFDIが日本経済と産業の活性化に極めて重要な役割を果たしうると信じ、日本政府に対し、FDIを歓迎し、投資環境を改善するための追加措置をとるよう求める。
これらの措置は、日本において事業を行うことをより容易で低コストにする規制および構造変化、透明性を増すための会計・財務開示の向上、および、相互に有益となる取引に対する明確なインセンティブ、例えば非課税で国境を越えた株式交換などを提供し得る法制上および税制上の諸策を含む。
そして、認識を新たにし投資取引の機会が増加することを促すため、両協議会は日本政府に対し、十分かつ強力なFDI支援を要請する。両協議会は、これらの有益性をより詳細に検証するためのジョイント・スタディグループを近い将来に設置する。
日米租税条約
両協議会は、両国の経済関係における大きな変化を反映させるため、時代遅れとなっている日米租税条約を改定することを引き続き支持する。両協議会は、両国政府が正式交渉を進展させていることを歓迎し、2003年中に終結するよう交渉を可能な限り早めることを要請する。これにより、両国間のビジネス環境が改善し、双方向の投資が拡大することを期待する。
年金改革
両協議会は、2001年10月に確定拠出年金を日本において導入するにあたり、日本政府が示した積極的対応を評価する。両協議会による2000年11月の共同声明に示したように、日本政府が現行の確定拠出年金制度を以下の方策により改善するよう求める。
・確定拠出年金を有効かつ退職後の主要な資金源とするための年間掛金拠出限度額の大幅な引き上げ、および従業員による任意の補完的掛金拠出の容認
・加入対象者の門戸拡大
・経済的困窮時における確定拠出年金資産の取り崩しの容認
・確定拠出年金運用商品の選択肢の拡大促進
・特別法人税の廃止
・確定給付年金等から確定拠出年金への全額移換が可能となるようにすること
両協議会は、日本政府に対し、既定の見直し期限にとらわれない確定拠出年金制度の見直しと改善を要望する。
公的金融機関
両協議会は、現在、日本政府が郵便貯金や簡易保険、そして住宅金融公庫などを含む公的金融機関の改革を進めるべく努力している点を評価する。税負担、金融庁による監督、ディスクロージャー規制、他の規制要件について民間競合者と同じルールを適用するなど、これら公的金融機関と民間金融機関との公平・公正な競争条件の整備を進めることが必要と考える。なかでも郵便貯金・簡易保険の改革については、来年4月の『日本郵政公社』発足以後も更なる検討が続けられ、抜本的な見直しが進むことを期待する。
バイオテクノロジー/食品安全性
両協議会は、世界の食糧事情の向上、医療、および環境保護に対するバイオテクノロジーの重要な役割を認識し、情報の交換と発信を通じたバイオテクノロジーに対する国民理解の促進に向けた日米協力を奨励する。両協議会は、たとえば、農業分野のバイオテクノロジーに関する安全ルールなど、食品の安全性に関するルールは、国際的な基準やガイドラインによって要請されている科学的根拠に基づくべきであることに合意した。両協議会は、両国政府が、科学的根拠に基づく、透明な、継続的に適用される基準、ルール、および規制を設けるにあたり、緊密に協力することを求める。
WTO
両協議会は、今回設置された7分野の貿易交渉委員会、すなわち農業、WTOルール、サービス、紛争解決等における交渉が、ドーハ・ラウンドが目標とする2005年1月1日までに合意され有意義な成果をあげるよう、日米両国政府が目標達成に向けリーダーシップと柔軟性を発揮していくことを要請する。また、投資ルールや競争政策等の新分野が、来年の第5回閣僚会議でコンセンサスを得て、公式交渉に移行するための検討作業を両国政府が協力して行うことを強く求める。さらに、WTOへの新規加盟を果たした中国が加盟条件を着実に履行していくよう、両国政府が協力して中国に働きかけていくことを支持する。
地球気候変動
両協議会は、全ての先進国と発展途上国が参加できる公平かつ柔軟で実効性のある地球温暖化防止の枠組み作りに向け、情報・意見交換を行うことに合意した。また、両国が技術革新に積極的に取り組むとともに、発展途上国への技術普及を進めることが重要であることを再確認した。
両協議会は、エネルギー節約の努力、たとえば現在進められている住居および商業ビル用のエネルギー効果ガラスの普及に向けた日米間の民間協力を奨励する。
情報通信技術
生産性の向上、ビジネスと企業経営の革新、及び日米経済の持続可能な成長に向けて、日米の情報通信技術産業は、ブロードバンド・携帯電話・電子商取引の基盤、アプリケーション及びサービスを発展させるべく、協力関係を強化しつつ施策を検討し実行に移して行く。
ブロードバンド・携帯電話・電子商取引の発展のためには、ICT基盤の整備ばかりでなく、認証、課金、著作権管理等の情報流通に関する安全かつ効果的対策を講じつつアプリケーション及びサービスを発展させることが重要である。
ビジネス機
両協議会は、成田および羽田両空港においてビジネス機のアクセスに限定的な改善が見られたものの、日本のビジネス機に関する政策と慣行は諸外国に比べ遅れていることを認識する。両空港において更に改善されることが求められる。
将来に向けては、ビジネス機産業におけるその他の側面における改善が検討されることは日本にとって望ましいことである。具体的には、チャーター機運用を容易にするための規制環境の改善、日本で登録されたビジネス機に使用する部品の事前認可を不要とすること、ビジネス機のパイロットおよびメンテナス要員への訓練要件を改定することなどがあげられる。

日米経済協議会声明

米国西海岸港湾労使紛争問題
米国西海岸港湾封鎖が日本企業にもたらした経済的インパクトを考慮すると、日米経済協議会に属する日本企業は、ブッシュ大統領がタフト・ハートレー法を発動するなど適切なアクションを取っていることを高く評価し、加えて、日米経済協議会は、この紛争が可及的速やかに解決することを希望する。

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