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第40回日米財界人会議共同声明 (仮訳)

2003年11月3日、ワシントンDC

日米経済協議会並びに米日経済協議会(以下、両協議会)は、両国の政府および経済界が、自由で開放された市場の必要性を再認識すると同時に、景気回復の持続を確実にするために行動すべきであることで見解を一致させた。世界経済は、世界の二大経済大国たる両国のリーダーシップに拠るところが大である。

米国経済
個人消費と設備投資に支えられた米国経済の堅調な回復を、両協議会は歓迎する。減税と景気刺激的な金融政策により、米国の経済成長は当面加速することが期待される。在庫は低水準にあり、需要拡大は生産を押し上げるであろう。労働生産性の上昇基調は、今回の回復過程が持続的であることを示唆している。但し、自律的な景気回復を確実なものにするためには、労働市場におけるより一層の改善が必要である。
経常収支赤字は長期的には維持困難な規模となっている可能性がある。また、医療サービス・保険や国家安全保障のための歳出の増加、並びに短期的な税収の減少のために財政赤字が拡大して来た。2004年度以降は財政赤字は縮小に向かうとも予想されているが、これら赤字の拡大は一層のドル相場の下落と、最終的には長期金利の上昇をもたらす可能性がある。
我々は米国政府による景気回復のための柔軟な方針と施策を支持しており、財政赤字を抑制し、長期的に貯蓄率を引き上げるためのイニシアチブを発揮することを要請する。
日本経済
より柔軟な金融政策と設備投資や輸出の回復に支えられた最近の景気回復の動きは、両協議会にとって喜ばしいものである。不良債権処理や企業のリストラクチャリングを加速するより抜本的な対応が始まっているが、こうした動きに新設された産業再生機構の支援も加わった。この方面での継続的な進捗を我々は期待している。景気回復を持続的なものにするためには、政府と日銀は柔軟に、かつ協調して、内需を拡大し、デフレを解消する政策にあたることが重要である。
我々は前向きな構造改革を追求する日本政府の決意を支持している。とりわけ、技術革新を支援し、一層のビジネス環境の改善を推進する広範な規制改革の加速に向けた政府の取り組みを要請する。
外国直接投資
両協議会は、日本政府が対日直接投資を5年で倍増の目標を達成し、或いはこれを超えるべく、あらゆる努力を行うことを日本政府に要請する。外国直接投資は、生産・雇用・税収の増加とともに、技術や新しいビジネス形態の導入により、生産性の向上と受入国の経済活性化に多大に寄与する。両協議会は、日本における対日直接投資に対する認識と対応を改善する為の持続的な努力の一環として、先進国における外国直接投資の多くがM&Aによるものであることと併せ、これら情報とそのメッセージを以前にも増して発信することを、日本政府に要請する。
さらに重要な点は、日本政府が投資環境の改善の為の具体的な方策をとるよう期待されていることである。新規参入、競争と革新の促進、透明性の向上を図る規制緩和、およびその他の改革、国境を越えたM&Aの増大に繋がる税の繰り延べと商法改正、法人税率の低減を含む税制の改善、地方自治体が投資企業に対して柔軟な優遇措置を提供できるよう、権限と財源の地方への移譲を行うべきである。
同様の提言は、既に対日投資促進民間フォーラム、および対日投資会議からも出されているが、両協議会は、原則としてこれらの提言を支持するとともに、日本政府により、それら提言が早急に実施されることが期待されている。
日米租税条約
両協議会は、去る6月11日に発表された日米租税条約改定に関する基本合意に至る両国政府の努力を多とする。この租税条約が締結されることにより、配当・ロイヤリティー・利子に関する源泉徴収税率の軽減と諸手続きの改善が図られ、その結果、日米両国企業に多大な恩恵をもたらすことになる。それ故、両協議会は交渉の早期終結を両交渉当事者に要請する。加えて両協議会は、米国上院と日本の国会において、2004年の出来るだけ早い時期に批准され有効となることを要請する。
これにより、両国企業は早期にその恩恵を受けることができるようになり、両国間の投資や両国におけるビジネス活動の促進に役立つものとなる。
社会保障協定
両協議会は、両国の企業並びに派遣員が共に恩恵を受けられるバランスの取れた日米社会保障協定を締結することにつき、両国政府が実質合意に至ったことを歓迎する。
両協議会は、今後両国政府が一日も早く協定に署名し、協定の発効に向けた両国内の諸手続きに着手することを強く要請する。
WTO
両協議会はWTOカンクン会議の決裂を受けて、日米両国政府が途上国を含む全ての貿易パートナーとの間で柔軟性とリーダーシップを発揮して主要な相違点を乗り越え、そしてグローバルな貿易体制での集団的な義務を遂行することを強く望む。全加盟国はドーハ開発アジェンダを、2005年1月1日までに合意すべく、農業などの極めて難しい問題への前向きな取り組みを望むものである。更に二国間協定や地域協定はWTOを補完し強化するものである。
2003年12月のジュネーブでの上級閣僚会議はドーハ会議の流れを取り戻す為の絶好の機会である。日米両政府には、先般のAPEC会議で提言されたように、ドーハ開発アジェンダについて"意欲的かつバランスの取れた結果"をもたらすように、全力を尽くされることを要請する。
年金改革
両協議会は、日本における少子高齢化の進行を踏まえ、公的年金制度と補完関係にある企業年金制度の充実が、今後さらに重要になると考えている。とくに、2001年10月に創設された確定拠出年金制度の普及は、年金制度充実の観点のみならず、証券市場活性化の観点からも有効である。両協議会は、日本政府に対し、現行の確定拠出年金制度について、既定の見直し期限にとらわれることなく、以下の改善を行うことを要請する。
・拠出限度額の大幅な引き上げ
・特別法人税の廃止
・従業員による任意の補完的掛金拠出の容認
・加入対象者の門戸拡大
・確定拠出年金資産の支払要件の緩和
・確定給付年金等から確定拠出年金への全額移換の実現
・確定拠出年金間のポータビリティーの拡充
・確定拠出年金運用商品の選択肢の拡大促進
公的金融機関
両協議会は、現在、日本政府が郵便貯金、簡易保険、住宅金融公庫などを含む公的金融機関の改革を進めるべく努力している点を評価する。両協議会は、郵政改革を本年4月の郵政事業の日本郵政公社への移管で終わらせることなく、さらに改革が進むことを期待する。しかしながら、こうした改革の項目や条件の検討に際しては、特に公的金融機関の当初の設立趣旨を踏まえ、日本の金融サービス市場に対する競争上の影響を考慮しなければならないと考える。
また、税負担、金融庁による監督、他の規制要件について民間競合者と同じルールを適用するなど、これら公的金融機関と民間金融機関との公平・公正な競争条件の整備を早期に進めることが必要と考える。両協議会は、なかでも、日本郵政公社の郵便貯金・簡易保険事業については、郵政公社による最近の新商品開発のイニシアチブなど業務拡大につながる新商品の引き受け・開発の拡大などを禁止することを日本政府に要請する。
コーポレート・ガンバナンス
両協議会は、米国においては、サーベンス・オクスリー法の制定、日本においては、商法改正により、監査役制度の強化や新しい委員会制度の導入が可能になるなど、両国においてコーポレート・ガバナンス制度の強化が進展していることを評価する。
日米の企業は、各々自身のガバナンスと経営手法とを有するが、健全なガバナンス体制の構築に不可欠と認識されている、透明性、説明責任、社外の取締役と監査役の独立性という共通原則がある。
日米の企業は、これらの共通原則にもとづき、企業経営の構造を強化していかねばならない。これが国内および海外の投資家の信頼感を高め、資本市場の成長と両国経済の安定化につながることになる。これに向けて、両協議会は、今後も、互いに学びあい、ベスト・プラクティスを追及するための努力を歓迎する。
バイオテクノロジー/食品安全性
21世紀の諸課題に対するバイオテクノロジーが果たす役割の大きさを認識し、その可能性を実現するため、研究開発から商業化にいたるプロセスにおいて、両協議会は、バイオテクノロジーに関する基準作りと、国民の正しい理解の促進に対しする日米協力を奨励する。そのためには、バイオテクノロジーと食品の安全性に関する基準やルール及び規制は、科学的根拠に基づき、透明かつ国際的な整合性を持たなければならない。
バイオ産業の発展には、IT・ナノテクなどの多様な技術との融合が必要であり、両協議会はこれを推進するため、国際的な企業間及び産学間の連携、並びにバイオ・ベンチャーの台頭を奨励する。
医療のイノベーション
医療機器・医薬品産業活性化のためには、研究開発、登録・認可、また薬価制定といった、製品が患者に提供されるまでの一連の政策形成諸段階における、政府の支援が重要である。認可および薬価制定における政策的支援は、研究開発の投資を誘発することで、革新的な治療法を生み出し、ひいては患者の生活を改善し、経済成長にも貢献する。
両協議会は、国内および国際的企業にとって投資し易く、イノベーションを進める機会づくりを、両政府が継続して着実に実行して行くことを要請する。
情報通信技術(ICT)
両協議会は、情報通信技術(ICT)の積極的導入が生産性を向上させ、企業経営とビジネスプロセスの効率を上げ、更にグローバル競争力を強化させることを認識する。
両協議会は、競争と革新が生み出され、経営者のリーダーシップおよび投資戦略が組み合わされている環境の下でICTが活用されて初めて生産性向上が実現するものと確信する。両協議会は、ICTの革新及びブロードバンドとモバイルネットワークの進展により、いつでも、どこでも、誰でも情報を交換できるユビキタス社会に近づくことを認識する。
両協議会は、この目的を達成するためには、ハイレベルのセキュリティとプライバシー保護を実現する信頼性の高いネットワーク化された環境を構築することが不可欠であると考える。即ち、ユーザー・データが保全され、個人情報が適切に保護されること、また迷惑メール、オンライン詐欺、ハッキング、ウィルスなどのネット上の攻撃を技術と情報共有を通じて防御し、これらの攻撃を法的に罰することができることである。
地球気候変動
両協議会は、全ての先進国と発展途上国が参加できる衡平かつ柔軟で実効性のある地球温暖化防止の枠組み作りに向け、産業別・セクター毎の情報・意見交換を行うことに合意した。
また、両国が費用対効果が高い温室効果ガス排出量削減のための技術革新に積極的に取り組むとともに、発展途上国を含む全世界への技術普及を進めることが重要であることを再確認した。
関連して、両協議会は日本の建築基準における省エネ規定強化への努力を継続し、かつ、日本政府によって迅速なアクションがとられることを要請する。
ビジネス機
両協議会は、日本のビジネス機に関する政策と慣行については、進展が見られたものの、諸外国に比べてまだ遅れていることを認識している。ビジネス機については、ビジネス機のためのスロット数、利用時間の拡大、通関関連業務の簡素化、ビジネス機にサービスを供する諸施設の整備など、更なる改善が望まれる。

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